幸い今日は雲ひとつなく、エーゲ海に沈む格別なサンセットを見ることができそうだ。人々はサンセットを眺めるために自分だけの場所を確保し、その時を待つ。カフェのテーブルから路地の階段、風車の前から人の家の屋根まで、思い思いの場所でほんのわずかなひと時を待っている。やがて太陽の傾きが深くなるにつれ、景色全体が黄昏色に染まり始めた。白と青に彩られたイアの町並みが色ずいていく。
展望台に続く細い道でバイオリン弾きの少年がいつの間にか演奏を始めていた。時折ずれる旋律がまだあどけない少年らしさを演出している。エーゲ海に沈む夕日、黄昏色に染まるイアの町並み、バイオリンの調べが溶け合い、極上の時間が流れていく。
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