一夜開けた今朝、ようやく一部の地下鉄が動きだし、クイーンズ経由でマンハッタンへ戻ることができそうだ。空港近くのブルックリンのホテルから一旦クイーンズのフラッシングまで出て、ようやく駅にたどり着いた。クイーンズブリッジに近づく頃、地下鉄車内からマンハッタンの見慣れた風景が見えてくる。ダウンタウンの方向からはいまだに煙がもくもくと上がっていた。しかし、いつも目に入る、そこにあるべきはずのツインタワーの姿はその摩天楼の風景には見つからなかった。53丁目の駅に着き、地下鉄を降りて地上に上がると、街のあちこに半旗がかかっているのが目に入った。
会社に着いてワールド・トレード・センターで働いていた知人が無事だったことを聞いてほっと胸を撫で下ろした。彼女は46階で仕事をしていて一度目の衝突を経験し、非常階段を1時間半かけて脱出した。けが人を下ろしたり、救出に向かう消防署員達を優先させながらの脱出だったので、時間が掛かったとのこと。彼女が建物を出て10分もしないうちにタワーが崩れ落ちたのを目撃した時には、生きているのが不思議だったという。
脱出する脇を逆方向に駆け上がって行った救出隊の人々はみな帰らぬ人となったであろうことは容易に想像ができた。今もなお瓦礫の下で救出を待っているのかもしれない。
別の知人がツインタワーの隣に立つ、ワールド・ファイナンシャル・センターで仕事をしていた。一度目の飛行機の激突時、地震かと思って窓を見ると上からは無数の紙が舞っていたそうだ。遠く上方に見える炎を目にし、ヘリコプターの事故かもしれないと同僚と話をしているうちに2機目の衝突による爆発が起きた。この時点で単なる事故ではないことを実感したという。窓から見るツインタワーの前を大量の紙に混じって無残に落ちてくる人々の姿が映った。道路には、叩き付けられた遺体が何体も転がり、駆けつけた救助隊が車外に出れないほどの瓦礫が次から次へと上方から落ち続けていた。
建物から退去指令がでて とるものもとりあえず外に飛び出して見上げると、そこには真っ黒な煙と赤々と燃える痛ましい姿のツインタワーが目に入った。このままではタワーが崩れるかもしれない、とにかくタワーから遠くに離れなければと思い、慌ててニュージャージー行きのフェリーに飛び乗った。ハドソン川から見えるツインタワーはいつもの見慣れた風景ではなかったという。
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