「イチゴ畑とイマジン」
セントラルパークの西側、72丁目辺りを少し入るとそこにイチゴ畑がある。正確にいうと「Strawberry Fields」、ジョン・レノンの死を偲んでセントラルパークの一角に預けられた場所だ。かつてのビートルズ時代の名曲から名づけられたのはいうまでもない。1980年12月8日、「ライ麦畑で捕まえて」を抱えた熱狂的なファンであるマ−ク・チャップマンの弾丸を浴びて、僅か40年のその生涯を閉じたジョン・レノン。「愛と平和」を唱えた彼に会いために、今もなおこの場所を訪れる人々が絶えることはない。
「Strawberry Fields」の真中には、大理石のモザイクで記されたIMAGINEの記念碑がある。いつこの場所を訪れても花が飾ってあるのは、今でも人々の記憶から彼のことが忘れられていない証拠なのかもしれない。ビートルズを解散して10年、ヨーコ・オノと二人(幼いショーン君もいたっけ)で歩み続けてきた日々の終わりは、あまりにもあっけなかった。世界中の人々が愛と平和の中で一つになれるとIMAGINEに込められた思いは、38口径のリボルバーによって無残にも凶弾された。ただ、その思いは確実に人々の心に受け継がれたのではないだろうか。
1980年以来、毎年12月8日になるとジョン・レノン追悼のために世界中からこの「Strawberry Fields」に人々が集まり、一晩中歌声が鳴りつづける。ニューヨークに来てから、何度か真冬の寒空の中、このためだけに分厚い防寒着を着こんで出かけていったことがある。いくつものギターの伴奏に合わせて見ず知らずの間柄にも関わらず、歌い出すとなんだか心が一つになったような気がした。10時39分には歌うのを止め、全員で黙祷を捧げる。世界が失ってしまった「愛と平和」を唱えた一人の人間のために。
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