「KNICKS VS 76ERS」









アメリカのスポーツで一番人気といえば、NBAが一番だろう。11月から5月まで、メジャーリーグはお休み、NFLはすぐに終了し、スポーツファンはNBA一色に染まる(まれにNHLファンもいるが)。現在NBAの東コンファレンスで1、2位を争っているのはニューヨーク・ニックスとフィラデルフィア・76サーズだ。2月1日にこの対決がマジソン・スクエア・ガーデン(MSG)で行われた。往年の英雄、パトリック・ユーインをトレードで放出し、期待の星だったグレン・ライスも今一つ活躍を見せず、アラン・ヒューストン、ラトゥール・スプリューエルの活躍でなんとか2位で踏ん張っているニックスと、今シーズントップを独走中の、去年の得点王、アレン・アイバーソン率いる76サーズの対決は嫌が負うでも盛り上がる。

数年前に映画「ゴジラ」の中で爆破されてしまったMSGは、NBA人気を証明するがごとく、90%の客の入りだった。試合前の練習中から、アイバーソンにはオーラが漂っていた。今シーズンから背負わされたキャプテンの名に恥じることなく、一人相撲のプレーからチームプレーへの変貌を遂げている。かつてチャールズ・バークレー一人のチームだった76サーズが、バークレーなき後に続いた低迷時期を見事に乗りきったのはアイバーソンというスーパースターを手に入れてからのことだ。

迎え撃つニックスの面々、今日のヒューストンは今一つ精細がない。シュートが数センチずれていて入らない。後半ようやく波に乗ってきた。スプリューエルのワンマンプレーもいつものむちゃなプレーがなくてさびしい。4thクォーターに入っても一度も得点が並ばずにフィラデルフィアに押されっぱなしだ。数回あと1点まで迫り、会場全体が雄たけびを押さえてガッツ・ポーズの準備までしているのに、毎回アイバーソンにその差を広げられる。敵ながら天晴れ、ほんと、いい選手だ。

アリーナの最前列にはいつものようにニックスのジャージを着た映画監督、スパイク・リーが座っている。時折立ちあがり、コートの横をコーチのように行き来しながらニックスの応援をしている。本人はきっと自分がニックスのメンバーだと思っているともっぱらの評判だ。同じくNY在住映画監督のウッディ・アレンはニックスベンチのななめ後ろの方で奥さんと二人で静かに観戦している。年齢さもあるが、対照的だ。この他にもいつもの観客というと、ビル・マーレーがいる。彼も無類のニックスファンだ。MSGの中ではみんな同じニックスファン、有名、無名に関わらず、今年こそは念願の優勝をと思っているに違いない。

残念ながら残り一分、最後の同点チャンスを見事にはずし、そのままニックスが敗れ去った。MSGには数少ない76サーズ・ファンの叫びがこだましていた。次回を見てろよと、心の中でつぶやき、帰宅の途についた。

おまけ:REAL MOVIE


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